【たてきの語ろう農薬】第1回 バランス感覚を身につけよう

農業に携わる人間は消費者などから農薬について質問されたり、農薬使用を否定されたりすることも多々あります。どのように応えればいいのか悩むことも多いと思います。本企画では農薬の使用に関して世間と対話していく上でひとつの方法論を示していきたいと考えています。(農薬ネット 西田立樹)
※記事にあるのは、掲載された2001年時点での情報になります。

■農薬の安全性を考える前に

食農不一致という言葉があります。食べる人と作る人が離れていることを指しますが、最近はどんどんその差が開いており、果物が木になることを知らない人さえいます。農作業の経験がある人も都会では非常に少なく、また経験していてもガーデニングや家庭菜園など農業とは感覚が違うものであったりもします。

そんな状況ですから農業における病虫害や雑草の影響など知る人など少なく、ましてや農薬の効果や使用方法や安全性について正しく理解している人など皆無といってもいいでしょう。しかし、毎日テレビやスーパーで減農薬や有機栽培作物の宣伝や効能は流れていますから、農薬は悪いものであり普通の作物は危険なものであると考えている人もたくさんいます。現状の情報の流れ方を見る限り、消費者がそのように考えることは当然であるといえます。

ですから、農薬使用や慣行栽培に理解を示さない消費者がいたとしても頭ごなしに否定することは絶対にいけません。消費者が理解を示さないのは当たり前のことなのです。しかし、農家はそれら消費者と対話していかなければなりません。では、どこに接点を見いだせばいいのでしょうか?

■大衆が求めるのは楽しい話

いつの時代も私も含めて誰もが聞きたい話は「面白い話」です。正しいかどうかは二の次です。そして、正しくて面白い話は「楽しい話」になります。農薬というものは先にも書いたとおり、実は誰もがよくわかっていないのです。わからないことを普通に話しても面白<はなりません。身近なものに置き換えて話をしていくとか、ユーモアに富んだ話をするとか、あるいは過激な話をするとか工夫が必要です。いきなり法令や毒性の数字を持ち出して説明しても永久に理解は得られません。それは農業者であるあなたが数学についていきなり数式を示して説明されているのと同じようなことです。

■農薬談義の進め方

農薬に関して話をしていると結論としては「使わないに越したことはないが仕方なく使っています」「必要悪です」といった結論になりがちです。確かに病害虫が出なければ使わないで済みますが、現実には必ず病害虫は出るわけであり、出れば使うわけですから決して必要悪ではありません。むしろ、積極的に農薬を利用していると考えるべきです。話す側かその認識を持つことがまず大事です。その上で「農薬という道具」をどのように活用して行くべきなのか、そのために求められる性能はなんなのか、そしてその性能は満たされているのかを考えていかなければなりません。農薬は特別なものではありません。車や電話や電気や衣服などと同様に人類文明が生み出した生活を便利にする道具に過ぎないのです。具体的な毒性データや性能について話す前に、話をする両者がその共通認識を持つことがなんといっても重要です。そのことなしに話をしてもむなしい結果が待つだけです。

■バランス感覚を身につけよう

あちらをたてればこちらが立たず…これは世の常です。農薬を使えば収穫が増えたり楽ができたりする反面、環境汚染や人畜毒性が不安。確かにその通りですが、そんなに単純なものでもないのです。どんなものにも良い点と悪い点がありますので、そのことを身近でなじみのある車と比較しながら農薬について見てみてみましょう。

このようにわかりやすくバランス感覚を身につけてもらうところからはじめていきましょう。


◆筆者

西田 立樹 ニシダタテキ

◆プロフィール

「農薬ネット」主宰

企業で農薬の研究を行いつつ「正しい農薬の知識を身につけるページ」をネットで公開中。著書に「気になる成分・表示100の知識」「ダイオキシン100の知識」(いずれも東京書籍)など。

注:web版『農業経営者』2001年6月1日 【たてきの語ろう農薬】から転載(一部再編集)。本文中の役職や肩書き等は2001年6月現在のものです。

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