【農薬をめぐる重要な10項目】8. 食品に残留した農薬が原因でがんにはならない

※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ 農薬編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。

8. 食品に残留した農薬が原因でがんにはならない

食品に残留した農薬が、原因でがんになるといわれることがあります。農薬登録の際、安全性試験として「変異原性試験」と「発がん性試験」が行われます。

変異原性試験とは、DNAや染色体に影響して突然変異を引き起こす性質を調べる試験のことです。発がん性試験では、マウスやラットのほぼ一生涯にあたる約2年にわたって、できるだけ多量の農薬を混ぜた餌を食べさせて、がんができるかどうかを調べます。がんになるメカニズムにはまだわからないこともありますが、農薬という一つの因子が原因となっているのではなく、化学物質や放射線、喫煙習慣やウイルス感染など、様々な因子が関与することまでがわかってきています。それで、発がん性のリスク評価は、得られた結果をもとに科学的に判断し行われています。発がん性試験において動物にがんの発生が認 められる場合でも、現実に農薬として使用する濃度で、そのリスクが無視できると判断された時には登録が認められるのですが、これまで農薬によってがんが引き起こされた事例はありません。

(1)発がん性を調べる試験
農薬登録の際、安全性試験として「変異原性試験」と「発がん性試験」が行われ、現在の最高水準の科学技術で発がん性のリスクが評価されています。また、農薬は、発がん性のリスクがないと考えられる使い方で、登録されています。

変異原性試験とは、DNAや染色体に影響して突然変異を引き起こす性質を調べる試験のことをいいます。3 つの異なる試験方法(復帰突然変異試験、染色体異常試験、小核試験)によって検査が行われます。体細胞で染色体やDNA に異常が起これば発がんに、生殖細胞に起これば次世代の催奇形性や遺伝病の誘発につながる可能性があります。

発がん性試験は、マウスやラットのほぼ一生涯にあたる約2年にわたって、できるだけ多量の農薬を混ぜた餌を食べさせて、がんができるかどうかを調べます。農薬の毒性試験の中でもっとも長い時間がかかります。また、現実での農薬の暴露に比べ、莫大な量が投与されるなどとても過酷な条件で行われます。

(2)がんになる要因
がんは、複数の因子が段階的に関与して発生するという説がよく知られています。化学物質や放射線、ウイルス感染などが発がんに関与することは明らかとなっていますが、ひとつの要因だけをがんの原因に結び付けることは困難です。発がん性は、化学物質や環境要因などを種々の因子と比較してがんになる危険率の違いで示します。

2013 年に国立がんセンターのがん予防・検診研究センターから発表された「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」では、2005年に日本で発生した部位別にがんのPAFを推計しました。ここで示すPAFとは、特定のリスク要因への曝露が仮に無かったとすると、がんの発生または死亡がどの程度減少したか、を表す数値です。それらの調査結果をまとめると、日本人のがん発症の要因は喫煙と感染性要因が約20%と見積もられ、ほかには飲酒、塩分摂取、過体重・肥満などなどさまざまな要因があげられています(がん死については図2-3参考)。
図2-3 日本人のがん死亡要因(AFP、%)
2005年に日本で発生した部位別がんのPAF(population attributable fraction、人口寄与割合)の推定値。特定のリスク要因への曝露が仮に無かったとするとその疾病での死亡が何パーセント減少するか、を数値で表した。(国立がんセンター予防研究グループ http://epi.ncc.go.jp/can_prev/ evaluation/2832.html を参考に作成)

また、がんの原因について食品安全委員会が行ったアンケート調査によると、一般消費者は食品添加物や農薬ががんの大きな原因と考えているのに対し、専門家は喫煙と加齢が主な原因 と考えていました(図2-4)。多くの専門家は農薬はがん発生の原因として考えられていませんでした。
図2-4 一般消費者と専門家における、がんの原因になると考えるものの違い
(食品安全委員会「食品に係るリスク認識アンケート調査の結果について」(2015年)より作成)

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