『週刊新潮』(2020年4月30日号)掲載 グリホサート/ラウンドアップに関する記述を徹底検証3

週刊新潮(2020年4月30日号)に、『特集「食」と「病」』第7回の記事が掲載されました。その中のラウンドアップ及びグリホサート(ラウンドアップの有効成分)について、科学的事実に反する記述が数多く見られました。そこで個々の内容についてQ&A形式で検証し、科学的エビデンスに基づき反証していきます(Qのカギ括弧内は記事からの引用・抜粋)。



以下、5月19日更新!








子供が怒り出したり、学校の成績が下がり始めた原因とグリホサートを結び付ける記述※がありますが、科学的にありえますか。

※記述の原文(抜粋):ハニーカットさんの息子さんが理由もなく怒り出したり、学校の成績が急に下がったりしたとき、「腸内にクロストリジウムという細菌が大量に増え、尿一リットル中から八・七μgのグリホサートが検出された」、「息子の食生活を有機食品と発酵食品中心に変えたところ、六週間後にグリホサートが不検出になり、徐々に元の元気な姿に戻っていったそうだ」

A 科学的にありえません。詳しくは、下記の記事をご覧ください(この記述の元になっている元農水相・山田正彦氏が自著でまったく同様の言及をした内容について、ファクトチェックをした結果「科学的根拠がない」ことを立証した記事です)。

参考


「妊婦でも(グリホサート)摂取量は想像以上に多く、自閉症など発達障害との関係が取りざたされている」とありますが、根拠はありますか。


A 科学的な根拠はありません。Qの主張は、間違った3段論法をもとにしたもので、致命的な誤りがあります。

から引用します。

セネフ博士とサムセル博士の論文で用いられた方法には、大きな間違いがあります。彼らは「三段論法に基づいた演繹的推論」を使いグリホサートの危険性を主張していますが、この論法は、2つ以上の命題から結論が引き出されたものです。セネフ博士とサムセル博士の最初の命題は、一般的にグリホサートの特性に関するものです。2番目の命題は、人の生理学に関するものです。これらの命題から、グリホサートと、さまざまな異なる病気の原因との間に因果的な関連があると主張していますが、これまで見てきたとおり、その三段論法は間違っているのです。

間違った三段論法の例1:
命題①:グリホサートはマンガンと結合して、マンガンを減らす。
命題②:精子の運動性はマンガンに影響を受けている。
結論:グリホサートは不妊と先天異常の原因である。

また、この推論を発展させて、グリホサートがマンガンと結合することが、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン症、不安障害、骨粗しょう症、炎症性腸疾患、腎結石、骨軟化症、胆汁うっ滞、甲状腺機能障害、および不妊症の原因だと言及している。さらに最近になって、まったく同じ推論を用いて、グリホサートとマンガンの結合が、米国での自閉症の増加の間に因果関係があると主張している。

しかしグリホサートと、それらの慢性疾患との間の因果関係を立証する科学的な研究は存在していない。

(中略)

要するに、新たな科学的な実験に基づいた結論ではなく、現存するさまざまな論文から「グリホサートに関連するもの」と「人の病気に関連するもの」を拾い出し、三段論法を用いて科学的にはあり得ない推論を主張しているに過ぎません。また彼らが科学誌に掲載した論文はメスネイジ博士とアントニオ博士により検証され、否定されました。つまり科学的に認められていない主張です。


以下、5月19日更新!

「(ゼン・ハニーカットさんの息子は、理由もなく怒り出したり、学校の成績が急に下がった)病院で検査を受けると、腸内にクロストリジウムという細菌が大量に増え、尿1リットル中なら8.7μgのグリホサートが検出された」とありますが、本当だとしたら大変なことですよね。


A 科学的根拠がまったくない言説です。腸内細菌と自閉症の関係も、グリホサートとクロストリジウム属の腸内細菌の関係も、科学的には証明されていません。単なる俗説です。

確かに文献を検索すると「クロストリジウム属の腸内細菌の増加と自閉症には関係がある」という論文と、「家畜や実験動物の消化管でグリホサートがクロストリジウム属の腸内細菌を増やす」というものがあり、仮説としてはかろうじて成立しますが、事実としては証明されていません。筆者の言説はさらに、このまったく関連していない2つの論文を無理やりつなぎ合わせて、仮説にもならない俗説を主張しているに過ぎません。

参考

また尿から検出されたグリホサートの量8.7μgは、言い換えると0.0087mgです。この数値は、通常、人の尿から検出される量と比較してどの程度でしょうか。人の尿を検査すると、通常1〜10μg/ℓ(1μg=0.001mg、つまり0.001〜0.01mg/ℓ)のグリホサートが検出されるといわれています。つまり通常範囲です。

さらにグリホサートのADI(一日摂取許容量)は「体重1kgあたり1mg/日」です。仮に子どもの体重が15kgだとすれば、1日の摂取許容量が15mgとなります。

その15mgと、尿から検出される0.0087mg/ℓという量を比べてみましょう。許容量のわずか1,700分の一ほどの極微量だとわかります。まったく心配いりません。


Q 「加工食品には残留基準値がなく、それぞれの食品別に公表されていない。国内で販売される小麦は残留基準値内だから調べる必要はないというスタンスなのだろう」とありますが、食品別の残留基準値が必要なのではないでしょうか。


A 加工食品は穀物、野菜、肉、魚など、多くの原材料を使用します。それぞれの原材料には、厳密な残留基準値が設定されています。

加工食品に基準値を設定しない理由は、すでに原材料それぞれに基準があるので、二重に設定する必要性がないからです。つまり加工食品の残留基準値は必要ではなく、加工食品に使用される原材料それぞれの基準値が守られていれば、安全な食品ということになります。


「(小麦)ふすまの残留値を見ると、なんと7.45ppmもある。普通の輸入小麦、例えばカナダ産「強力小麦粉」なら約0.17ppmだから、実に44倍という高濃度のグリホサートが含まれている」とあります。やはり「ふすま入りのパン」は食べない方がいいのですか。


A 食べても大丈夫です。まず本文にも記載されていますが、小麦ふすまと強力小麦粉のグリホサート検出量は、どちらも残留基準値30mg/kg(=30ppm)以内です。

そして記事中の一般社団法人農民連食品分析センターによる調査書(2019)によると、ふすま入りの商品から検出されたグリホサートの量は0.23ppm(=0.23mg/kg)です。

また、あくまでもこれは、パン1kg中に含まれる量です。食パンが8枚切りだとすると、1枚あたり約45gなので、小麦ふすまを含む食パン1枚に含まれるグリホサートは0.01mgでごく微量です。グリホサートは、微量であれば毒性は見られない(無害)ことが多くの実験から証明されているので、ふすま入りのパンを毎日食べても大丈夫です。


「グリホサートが引き起こす様々な健康障害で、もっとも大きな影響を受けるのが、乳幼児や子どもたちだということを考えていただきたい」とあり、とても心配です。


A 心配いりません。乳幼児や子どもについても考慮して残留基準値は定められています。

グリホサートの一日摂取許容量(ADI)は、「体重1kgあたり1mg/日」で設定されており、体重3キロの乳児であれば1日に3mg(3000μg)のように、体重ごとに定められています。さらに各食品の摂取量は国民平均だけでなく、幼小児、妊婦、高齢者など集団ごとに調査して、食品を通じた農薬の摂取量が、ADIとARfD(急性参照用量)を下回ることを確認した上で、各食品の残留基準値が設定されます。

つまり「乳幼児や子どもを含め人が、生涯にわたり毎日特定の農薬を摂取し続けた場合に、健康への影響がない量」としてADIが設定されているのです。

さらに日本だけでなく、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)も、グリホサートを「微量はヒトの健康に影響があるものではない。子どもがグリホサートに敏感であることを示す兆候もない」との見解を示しています。

参考


「グリホサートはごく少量でも健康被害をもたらすという動物実験の結果があるなら、やはり避けた方が賢明だ」との記述がありますが、微量でも影響がありますか。


A 筆者が「ごく少量でも健康被害をもたらすという動物実験の結果」が具体的にどのような実験、論文を根拠にしているのか不明ですが、セラリーニ博士の実験やコンピュータが専門のセネフ博士、サムセル博士の論文を根拠にしているのであれば、すでに他の論文により検証、否定されています。つまり科学的に認められていない主張ということです。

すべての化学物質には「用量作用関係の原則」があります。一言でいえば、高濃度では毒性があるものであっても、低濃度であれば毒性は見られない(無害)のが通例です。多くの実験から、グリホサートにもこの原則が当てはまることが科学的に証明されています。

参考


「厚生労働省がグリホサートの残留基準値のリストに食肉を加えているのは、検出される可能性があるということだ。これは飼料としてGM作物を食べさせているからだ。食用部分で多い順に並べると牛(5ppm)、豚(0.5)、鶏(0.5)となる。これはEUや、世の中で使われている食品規格のコーデックス基準と比べると、牛なら100倍という高さである」との記述がありますが、日本の基準は他国と比較して緩いのではないでしょうか。


A 食品の安全を守る基本は「一日摂取許容量(ADI)」を順守することです。ADIは、生涯にわたり毎日特定の農薬を摂取し続けた場合に、健康への影響がない量のことを言います。

ADIをコップだと仮定してください。食品ごとの残留基準は、あくまでもADIの内訳、つまりコップに水を入れるためのスプーンです。食品それぞれの残留基準(スプーン)は、国や地域ごとに、どのような農薬の使い方をするのか、その食品をどのくらいの量を食べるのかなどの条件により違いがあります。しかし食品ごとのスプーンの大きさと、食品の安全性とは関係がありません。

そもそも残留基準値(スプーン)の大小を他国と比較する意味はあるのでしょうか。どのスプーンを使ったとしても、ADIを超えて、コップから水が溢れ出さない限り、健康に影響はありません。この筆者のように、ADIというコップ全体の量を無視して特定の食品ごとの残留基準だけを取り出し、「こんなにスプーンが大きくて危険だ」という言説を鵜呑みにしないことです。

参考



「グリホサートを摂取すると、体内から排出されるには168時間程度、つまり一週間かかる。毎日食べると体内から消えることはない」という記載があり、不安です。

A 安心してください。農薬は厳しい安全性試験が行われており、もし健康に被害を与えるような量が体内に残留することが試験で証明されれば、農薬として販売することは禁止されます。つまり体内に残留することはありません。

グリホサートなど化学物質の体内残留量は、通常は時間とともに減少します。半分の量まで減る時間を「半減期」と呼び、半減期を迎えるたびに体内残留量は半分に減るので、半減期を10回迎えれば残留量は1/2x10=1/1024、20回迎えれば1/2x20=1/1048576、つまり100万分の1以下まで減少します。こうして時間をかければ、健康に影響がない量まで体内に残留する化学物質の量は減っていきます。

糞、尿、汗、乳などは体内の化学物質が排出される経路であり、これらに化学物質が含まれていることは、体内から化学物質が正常に排出されている結果と考えられます。

すべての化学物質には「用量作用関係の原則」があります。一言でいえば、高濃度では毒性があるものであっても、低濃度であれば毒性は見られない(無害)のが通例です。多くの実験から、グリホサートにもこの原則が当てはまることが科学的に証明されています。

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