【農薬をめぐる重要な10項目】コラム1 急性参照用量の設定

※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ 農薬編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。


2014年2月14日食品安全委員会農薬専門調査会は 「農薬の急性参照用量(ARfD)設定における基本的考え方」という報告書を公開しました。

農薬の残留基準値は一日摂取許容量(ADI)によって決められています。ADIはヒトが毎日、生涯にわたって摂取しても、現在の科学的知見からみて健康への悪影響がないと推定される、一日あたりの摂取基準です。これに対してARfDは、24時間あるいはそれより短い時間に経口摂取した場合に健康に悪影響 を及ぼさないと推定される摂取量です。リスクを考えるときのポイントは「量」です。毒性物質でもごくごく微量であれば、健康に悪影響を及ぼしません。ということは、生涯にわたって毎日、摂取しても健康に悪影響が生じないと考えられる量と、一度に摂取しても(継続して摂取し続けない)悪影響が生じない量を比べたら、前者の方が小さい値になることは想像がつきます。

例えば、食塩は体重1kgあたり3〜3.5gの食塩を一度に摂れば、実験動物ならば半数が死にいたる物質ですが、ヒトは食塩なしには生きられません。しかし、厚生労働省は一日あたりの摂取量として、日本人の食事摂取基準策定検討会(2014年3月)において、18歳以上男性は8g未満、18歳以上女性は7g未満という目標値を推奨しています。WHOはさらに厳しく5g未満ですが、日本人の一日の平均摂取量は12gです。実際には濃い味付けの食品を口にしてしまい、この目標値の何倍かの食塩を摂取してしまうこともあるでしょう。けれど、一度農薬くらいこの目標値を超えたとしても、それで重篤な健康被害が起こらないことを私たちは経験的に知っています。

同様にADIにとらわれ過ぎると、正確にリスクを察知することが妨げられるケースも出てくるでしょう。

これまで日本では、一定量を超えて高濃度に農薬が残留する食品を一日以内に大量に経口摂取した場合の安全性評価基準が、ごく一部を除いてありませんでした。その為、ほとんどの農薬ではADIを用いた慢性的影響評価しかできませんでした。また、実際に健康被害は起こらなくても、残留基準超過の影響を過大評価してしまう可能性がありました。国際的には、農薬の短期間の大量摂取における健康への影響においては、ARfDが用いられています。そこで、今回、日本でもすべての評価対象となる農薬に対してARfDを設定するルールが示されたのです。関連文献を集めたり、新しく評価データを作成させたりして、ARfDを設定する作業が始まります。

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