【農薬をめぐる重要な10項目】3. ヒトに対する安全性は、残留基準で守られる

※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ 農薬編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。

3.ヒトに対する安全性は、残留基準で守られる

農薬の安全性は、ヒトの口に入る場合、作業者への影響、環境への影響、作物への影響の全部で4つの観点からの安全性が審査されます。

ヒトに対する安全性としては、日常生活を通じて摂取する農薬の量が、毒性試験の結果から得られたADI(1日摂取許容量)の範囲におさまるように、作物ごとに農薬の残留基準値が設定されています。ADIとは、ヒトが一生涯にわたり毎日、摂取しても中毒を起こさないような量のことで、動物実験を繰り返して定められます。殺虫や殺菌、除草効果の成分に限らず、そもそも全ての物質は多かれ少なかれヒトへの毒性があるのですが、農薬の場合は使用基準や残留基準などの基準が設定され、リスク管理が有効に行われています。また、国や自治体は残留実態調査を行いリスク管理が有効に行われていることを確認しています。2014年、3948戸の農家を調査したところ農薬の不適正な使用は、使用してはならない農産物に誤って使用した事例、使用回数を誤って使用した事例の1戸ずつ、合計2戸のみでした。

■農薬編解説

農薬は、農産物の安定供給と高品質化、農作業の軽減化に大きな役割をはたしています。しかし、殺虫剤や殺菌剤、除草剤の成分に限らず全ての物質には多かれ少なかれ毒性があります。私たちが日常生活を通じて摂取する農薬の量は、毒性試験の結果から得られた作物ごとの残留基準の範囲内に収まるように使用されています。ですから、私たちが食品や水・大気から摂取する農薬の量は影響を与える限界より極めて少なく、健康への悪影響の心配はありません。

(1)安全基準と管理基準
安全基準は科学的に検討して設けられるもので、その基礎になるものが無毒性量(NOAEL : No Observed Adverse Effect Level)です。NOEALはマウスやラットなどの動物を用いて、反復投与試験、発がん性試験などの毒性試験を行い、いずれの試験でも有害な影響がみられない最大投与量として求められます。NOAELをもとに作られた慢性的な悪影響のための安全基準が「一日摂取許容量」(ADI:Acceptable Daily Intake)で一回に大量の農薬を摂取した場合の安全基準が急性参照用量(acute reference dose:ARfD)です。ADIはある農薬が含まれている(残留している)すべての食物から摂取される量について、毎日一生かかって摂取する場合の基準です。ARfDはある農薬がそれぞれの食物にふくまれている量について、1回で大量に摂取する場合の基準になります。

実際には安全基準が守りやすくなるように、管理基準が設けられます。作物レベルで安全を担保するために設定する残留基準も管理基準のひとつです。管理基準は安全基準そのものではありません。これは世界で共通していることですが、安全基準は作物ごとに農薬登録された農薬についてだけしか定められません。ポジティブリスト制にすると、使用対象外の作物(非登録作物)については管理基準がないので、そのような作物でその農薬が検出されると廃棄されることになってしまいます。しかしこれでは、ヒトの健康を損なうおそれのない微量の農薬等の残留が認められたことをもって、違反食品と取り扱われることとなる等、不必要に食品等の流通が妨げられる恐れもあります。そこで問題のない微量の残留によってこのような廃棄が起こらないよう必要になったのが一律基準です。

(2)残留基準
農薬は農薬取締法にもとづき、安全性や環境への影響などを厳格に審査し、登録されます。登録されなければ、製造や販売、使用は認められません。また、環境や健康への影響が生じないよう使用基準や残留基準が定められています。

1回の摂取で中毒をおこさないような少量でも、長い間、繰り返し摂取すれば、薬剤が代謝や排泄されずに体内に蓄積され、有害な影響を及ぼす可能性があります。このような長期的な暴露によって起こる有害な影響を慢性毒性といいます。その量は作物の種類や農薬の成分などで異なります。そこで、食品衛生法に基づく食品の成分規格の一つとして残留基準値が設定されています。ちなみに残留基準と同じ残留量を摂取しても、急性中毒のおそれはありません。

残留基準値は、ADIを越えないよう、国民の摂取食品統計から算出された平均的な食品1 日摂取量や通常の使用法による農薬残留実態調査値などを参考にして、決められています。さらに、残留基準値をこえないように使用するための管理基準として、使用方法、希釈濃度、使用時期、使用回数などの農薬使用基準が定められています。

(3)農薬の使用制限
作物に散布された農薬は雨や風で洗い流されたり、太陽光や微生物によって分解されたりして短期間で多くが消失します。また、植物体内に吸収された農薬成分は、分解されて減少します。農薬の分解や消失の現象にしたがって、収穫時に残留が残留基準値以下になるようにするために、農薬は使用基準に従い、使用が制限されています。

農薬が収穫物に残留する場合がありますが、国産品、輸入品 を通じてごくわずかです(表 2-4)。更にその数値が残留基準を超えたものは一層少なくなります。輸入品の件数が多いのは、検査数が多いためで、割合はあまり変わりがありません。

表 2-4 農作物中の残留農薬検査結果
(厚生労働省「食品中の残留農薬等検査結果について」より作成。 ()内は全体の検査数に占める割合を示す。)

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