【参考資料】リーキーガット症候群について

リーキーガット症候群に関する情報が、食品安全委員会第29回企画等専門調査会(2020年1月30日)会議で公開されましたので、ご紹介します。
食品安全委員会第29回企画等専門調査会(2020年1月30日)会議資料「資料1 参考資料(その4)」


英国国民保健サービス(NHS)によるリーキーガット症候群に関する一般向け情報提供

■“リーキーガット症候群”

「リーキーガット症候群」は、長期にわたる広範な症状(慢性疲労症候群(CFS)及び多発性硬化症(MS)など)の原因として一部の医療関係者が主張している説である。

「リーキーガット症候群」の提唱者らは、多くの症状及び状態は、孔の開いた(透過しやすくなる)腸を通って血中に取り込まれた細菌、毒性又は他の物質に対して免疫系が反応することが原因で起こると主張する。

確かに、一部の状態及び投薬治療が「透過しやすくなる(leaky)」腸の原因となる可能性はある(科学的には腸管の粘膜透過性の増大と言う)が、現時点で、孔の開いた腸が、重大で広範にわたる何らかの問題の直接的原因となるという理論を裏付けるエビデンスはほとんどない。

また、腸の漏れやすさ軽減への一助となると一部の人たちが主張する栄養サプリメント及びハーブ療法などの「治療法」が、状態の大半に関して、何らかの有益な効果を有するとするエビデンスはほとんどない。

腸が「透過しやすくなる」原因は?

腸の内側は、粘膜バリア(腸管内宮とその他の体の部分を隔てている障壁)を構成する細胞の単層に覆われている。

このバリアは、栄養分を効果的に吸収するだけでなく、高分子の大半及び病原菌が腸管を通って血流に侵入し、広範な症状を引き起こすことを防ぐ。

何らかの理由でこのバリアの有効性が弱まり「透過しやすくなる」状態となることはありうるが、このこと自体は重大な問題を引き起こすのに十分とは考えられていない。

アルコール及び特定の鎮痛剤
アルコール、アスピリン及びイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、腸の粘膜層に対して刺激性であることはよく知られている。それらは細胞間の密閉性に損傷を与え、その結果、一部の物質が間隙を通って血流に入ることはありうる。

消化管疾患の専門家らの一般的な考えでは、通常、これらの刺激物は腸の特定部分に軽度の炎症を引き起こす程度である。

通常、それは明白な症状を引き起こさず、投薬又は飲酒を中止すれば時間の経過と共に改善される。最悪の場合でも、炎症が稀に腸管粘膜中に潰瘍を引き起こす程度であると考えられる。

特定の症状及び治療法
腸管粘膜の密閉性は、以下の状態及び治療法によっても損傷を受ける可能性がある。

・炎症性腸疾患(クローン病など)
・感染性腸炎(サルモネラ属菌感染、ノロウイルス感染及びジアルジア症など)
・セリアック病
・化学療法
・慢性腎臓疾患
・腹部への放射線療法
・免疫抑制剤
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)
・嚢胞性線維症
・1 型糖尿病
・敗血症
・複雑な外科手術

一般的に、こうした状態にあっても、「透過しやすくなる」腸に対する治療は不要である。しかし、特定の状況下では、例えばクローン病患者にとっては、腸の炎症を軽減させるための流動食は便益となる場合がある。これは、透過しやすくなる腸を改善することにも繋がる。

「リーキーガット症候群」の理論

「リーキーガット症候群」を提唱する人たち(主に補完・代替療法の開業者)は、腸内の酵母又は細菌の過剰な増殖、栄養不足及び抗生物質の使い過ぎなどを含め、非常に広範な要因の結果として、腸管粘膜が炎症を起こし透過しやすくなる状態となると信じている。

彼らはまた、消化されなかった食物の粒子、細菌の毒性物質及び病原菌が「透過しやすくなる状態」の腸壁を通って血流に入り、そのことが免疫系の引き金となり、全身に持続的な炎症を生じさせると信じている。彼ら曰く、このことは、以下に示す更に広範な健康上の問題と関連性がある。

・食物アレルギー
・片頭痛
・疲労感及び慢性疲労症候群(CFS)
・喘息
・全身性エリテマトーデス(lupus)、関節リウマチ及び多発性硬化症(MS)
・強皮症や湿疹などの皮膚症状
・自閉症

しかし、現時点で、これらの症状が実際に「透過しやすくなる状態の腸」が原因であることを示唆するエビデンスはほとんどない。

喧伝されている製品
リーキーガット症候群の考えを提唱する人たちによって、多種多様の「治療法」が提案されている。それらは、ダイエット本の類、栄養サプリメント(例えば、プロバイオティクスを含有するもの)、ハーブ療法、グルテンフリー食品及び他の特別な食事(低FODMAP(小腸内で消化・吸収されにくい糖類)ダイエット、低糖ダイエット又は抗真菌剤ダイエットなど)である。

しかし、「リーキーガット症候群を治せる」と主張する人たちが提供する治療法には慎重に向き合う必要がある。彼らが治療に役立つと主張する多くの症状に関して、有益な効果を示唆する科学的エビデンスはほとんどない。

「リーキーガット症候群」のために提案されている食習慣変更のうちの一部(低FODMAP ダイエットなど)は、過敏性腸症候群(IBS)に悩む人たちにとっては一助となる場合があるが、その作用は「透過しやすくなる」腸の存在とは無関係であると考えられる。

概して、食事から何らかの食品を排除することは、栄養失調に繋がりかねないことから、厳密な必要性があり(セリアック病患者など)かつ医師の助言の下で行われる場合を除いては、良い考えではない。

助言及び更なる情報

診断が確定しない症状を有する人たちには、英国国民保健サービス(NHS) の「医学的に説明困難な身体症状」に関する記事が役立つかもしれない。このような病名が明らかでない身体症状は意外にも多く、英国の全ての開業医受診理由の5分の1 を占める。

特定の健康状態と診断されている場合は、NHSの「症状別治療法A からZ」というサイトを勧める。このサイトでは、治療法に関して、エビデンスに基づく信頼できる情報が得られる。

概して、「ホリスティック」及び「ナチュラルヘルス」関連のウェブサイトは、懐疑的な視点で閲覧すべきである。そこにある情報が正しい又は科学的事実やエビデンスに基づいているとの思い込みは禁物である。
(以上)

この内容は参考になりましたか?
ご回答いただきまして、ありがとうございます。
今後の参考にさせていただきます。
Powered by i-ask
Page Top