【アメリカのラウンドアップ裁判って何?】Q アメリカのラウンドアップ裁判は“訴訟ビジネス”と関係していますか?

A “訴訟ビジネス”という言葉をご存知でしょうか。日本人には聞きなれない言葉ですが、アメリカではよく使われています。弁護士の数が圧倒的に多く、日本の3万数千人に対して、アメリカは100万人以上。彼らが食べていくためには訴訟の種を自ら掘り起こしていく必要があるのです。懲罰的賠償という独自制度により弁護士の成功報酬がケタ違いになることもラウンドアップ裁判の訴訟ビジネス化に拍車をかけています。

多額の賠償金が取れそうな案件を見つけた

実際、ジョンソン事件の原告弁護士の一人、リッツンバーグ氏は「私の専門は発がん性商品の不法行為を問う訴訟案件だ。担当していたがん関連裁判が一息ついたので、事務所にとって次の大きな獲物を探していた。そんなとき、国際がん研究機関(IARC)によるグリホサートに発がん性がある(2015年の「おそらく発がん性がある」グループ2Aへの分類)との報道を知った。そこで、製造元モンサントを相手取って裁判を起こすことを決め、(原告の)一般公募を開始した。そして現在、2000件の訴訟を起こしている(2018年8月20日現在)」と取材に対して答えています。

つまり先に深刻な人身被害があって、その救済のために訴訟を起こしたわけではないのです。IARCの判断を受けて多額の賠償金が取れそうな案件を見つけたので、訴訟を起こすためにラウンドアップに長年接触した原告を探した、という流れです。

ネット広告からテレビ、ラジオCM、YouTube広告を活用して応募を募る

リッツンバーグ氏の原告募集サイトでは、現在もネット広告からテレビ、ラジオCM、YouTube広告を活用して応募を募っていて、「もし、あなた自身あるいは愛する人がラウンドアップに接触したことがあれば、補償される権利を有するかもしれません」  「ほかの多数の弁護士事務所も同様の広告を出していますが、モンサントを相手取ってラウンドアップ裁判に集中できる弁護士は私を筆頭に数人しかいません」といった宣伝コピーが躍っています。

イケメンのリッツンバーグ氏がメディアに露出しながら世論も味方につけ、賠償金の相場観を上げながら、集まった原告一人ひとりを勝訴に導いていく。最後は、背後に控える膨大な原告数を武器に被告の農薬メーカーに圧力をかける。そして、一気に巨額の集団賠償金や和解金を引き出そうという訴訟ビジネスによくあるビジネスモデルを実践しています

リッツンバーグ氏は判決後、所属していた法律事務所から独立。ラウンドアップ裁判をメイン商材にしたがん訴訟専門事務所を設立し、モンサントに対して新たな訴訟を次々と起こしている訴訟ビジネスの成功者です。「ジョンソン事件」の判決は約86億円。弁護士の成功報酬を20%とすると、彼は1つの裁判で約17億円もの大金を手にするのです。

回答者:公益財団法人食の安全・安心財団理事長、東京大学名誉教授 唐木英明

    農業ジャーナリスト、農業技術通信社顧問 浅川芳裕

編集担当清水泰

回答日:2020年1月16日

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